<第9回>長男が生まれ、父・徹氏は「岩手に住もう」と横浜育ちの母・加代子さんを説得した

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 大谷の父・徹(52)は24歳の夏、三菱重工横浜の野球部を引退、その年の12月に加代子(51)と結婚式を挙げた。独身寮を出て、横浜市西区の社宅へ。鉄筋コンクリートの5階建て。住まいは2DKだった。

 野球部にいたときは勤務も午前中だけ。ワープロ打ちとコピー取りといった仕事が主だったものの、引退後はそうはいかない。当時はコンピューターが普及し始めたころ。三菱重工横浜のグループ企業のシステム課のような部署でコンピューターの勉強をしながら親会社の業務をした。

「コンピューター関係の勉強をしなさいよと。プログラム言語を覚えて、自分でプログラムをつくれるようにと。システム関係の仕事でした」(徹)

 そして結婚の翌々年にあたる88年、徹が26歳になる年の3月に、長男の龍太(27)が生まれた。

 横浜にはそもそも野球をやるために来た。野球部引退後も居続けなければならない理由はない。新しい家族ができたこともあって、「長男だし、ゆくゆくは生まれ故郷の岩手に帰ろう」という徹の思いは次第に強くなっていく。

 しかし、加代子は横浜生まれの横浜育ち。都会の生活を捨てて岩手に行くことに「まったく抵抗がなかったと言えばウソになります(笑い)」と言うのはもっともだ。

 徹が当時を振り返ってこう話す。

「ずっと横浜にいることも考えなくはありませんでした。 

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