著者のコラム一覧
春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

IOCバッハ会長は8年前、高橋治之元理事の“追放”を組織委に求めていた

公開日: 更新日:

■筆者と同乗していたIOC委員に1本の電話が

 それは、14年の6月下旬のことだった。同1月に同組織委が発足したばかりの時期である。私は友人のIOC委員と車中にあった。来日した彼とプライベートな食事を楽しむために車を走らせていた。そこにバッハから電話がかかってきたのだ。

「会長からだ!」と彼がバッハの質問に緊張しながら真摯に答え始める。私は聞き耳を立てた。それは主として竹田恒和IOC委員(当時)のことであった。竹田は日本オリンピック委員会(JOC)の会長でもあり、第9代IOC会長に就任したばかりのバッハにとって、五輪開催地の長の身辺を知ることは重要だっただろう。

■「詳細は調べて改める」

 しかし、それは竹田と高橋の関係を問うものでもあった。高橋が組織委理事に選ばれたのはその月の初めだった。執拗に問われた友人は「詳細は調べて改める」と電話を切った。

 東京五輪開催が決定した総会で第9代IOC会長に就任したバッハは、オリンピック改革をその所信としていた。中でも五輪招致活動の不正根絶にこだわった。五輪倫理規程を改正し、利害関係者による一切の贈与を厳禁した。この「倫理規程」にも傍若無人であった人物がいた。五輪シンジケートの「埋み火」とも言えようか。ラミン・ディアクと高橋治之である。

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