突然告げられた強制米留学、現地では毎日ドミニカ人全員に飯を奢り続け、球団の領収書を切った
「アメリカでサードの勉強してこい」
……サード? 俺は当時、捕手で入団した。打撃力を鍛えようとしたのか、三塁手としての修業を言い渡されたのだ。ルーキーリーグとはいえ、世界中から将来の有望株が集まる場所。ドミニカ共和国の選手を中心に、実力ある若手がひしめき合っていて、俺は試合に出ることすらかなわない。出られたとしても1打席だけとか代打とか、その程度だった。
ミールマネーこそなかったものの、ロクに試合にも出ていないのに、年俸(入団時の推定年俸400万円)も受け取り、食費や滞在先での費用は全部球団が負担していた。
一方で、一緒にプレーしていたドミニカの選手たちはミールマネーを家族に仕送りするため、自分の朝食を抜いて食費を節約している。
ドミニカの選手たちは試合で本塁に生還する際、決まって足ではなく頭からスライディングする。それを不思議に思って、ドミニカから来たチームメートに「何で足からしないの? ホームでヘッドスライディングは危ないだろ」と聞いたことがあった。すると、「足だとすぐに捻挫とか骨折しちゃうんだよ。(食事を切り詰めているせいで)栄養失調のやつも多いから。頭からならキャッチャーと交錯しても手をさっとよけて逃げられる」と。それを聞いて、さすがに体に良くないなと思い、翌日以降、朝7時にマクドナルドへ集合をかけた。週末は自分の滞在先に選手たちを招待してバーベキュー。留学中の1カ月間、毎日おごり続けた。