叱責、鉄拳、罰金…試練の日々で星野監督よりも「怖かった人」
コトの経緯を説明すると、島野さんは俺の目の前でスタメン外しを進言したコーチに「おまえ、監督にそんなこと言ったんか。それはアカンやろ!」と一喝してくれたのだ。
「タケシ、おまえもつらいだろうけど、そんなこと言わんと我慢してやっとけ」
こう言ってたしなめられた俺は、「島野さんが面と向かって怒ってくれた。ここまでにしとかないといかんな」と、振り上げた拳を下ろすことができた。
その日の試合で俺の代わりにスタメンに入った助っ人のアロンゾ・パウエルが1打席目に自打球か死球でケガをして途中交代。そうしたらそのコーチが「おまえが行け」。どの口が言うんや、と思ったけど、俺に拒否権はない。コノヤローと思いながら打席に向かい、2打席目か3打席目に本塁打を打った。心の中でそのコーチに「俺を出しときゃ打つんじゃボケ!」と叫んだ。
あのとき島野さんが来なかったら、俺はそのコーチをぶっ飛ばしていたと思う。
島野さんは、星野監督から全幅の信頼を得ていたからこそ、怒らせたら怖い。正直、俺は星野監督よりも島野さんの方が怖かった。外野からベンチへ全力で走って帰らなかったらめちゃくちゃ怒られたし、走塁ミスやサインミスにも厳しかった。
しかも島野さんは星野監督の要望や指示などの全てを選手に伝えていなかっただろう。「名参謀」といわれるゆえんがここにあると思う。