「時の審廷」芦辺拓氏

公開日: 更新日:

「日本占領プランと同様に記憶に残っていた帝銀事件、下山事件も取り入れましたが、実際には3つの事件はつながりはありません。しかし、これまで考えられていないそれぞれの動機を想像したとき、まるで小説の都合に合わせたかのような史実に巡り合ったんです」

 下山総裁が失踪前に帝銀マーク入りライターを持っていたこと、帝銀事件に使われた毒物と日本陸軍が開発していた毒物が一致していたこと――。あまり注目されていない史実が持つ偶然を緻密かつ大胆に結んだ。

 なぜ3つの事件が起こったのか。その陰謀が現代に生きる森江春策によって解き明かされるうちに、官僚による利権争いや虚像が“今”に重なって見えてくる。

「戦前にローマ字教育が推奨された裏に初等教育を早く終わらせて労働に回そうという計画があったように、いつの時代も権力者の企みのトリックと、ミステリーの中で犯人が仕掛ける現実離れしたトリックは通じるものがあります。そのあたりを楽しんでもらえるとうれしいですね」
(講談社 1600円)

▽あしべ・たく 1958年、大阪府生まれ。90年「殺人喜劇の13人」で第1回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。著書に「綺想宮殺人事件」「奇譚を売る店」「時の密室」など。

【連載】著者インタビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  2. 2

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  3. 3

    ドジャース大谷翔平がついに“不調”を吐露…疲労のせい?4度目の登板で見えた進化と課題

  4. 4

    清原果耶「初恋DOGs」にファン失望気味も…《低視聴率女王》待ったなしとは言い切れないウラ事情

  5. 5

    会議室で拍手が沸き起こったほどの良曲は売れなかった

  1. 6

    国分太一が社長「TOKIO-BA」に和牛巨額詐欺事件の跡地疑惑…東京ドーム2個分で廃墟化危機

  2. 7

    兵庫は参院選でまた大混乱! 泉房穂氏が強いられる“ステルス戦”の背景にN党・立花氏らによる執拗な嫌がらせ

  3. 8

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  4. 9

    遠野なぎこさんか? 都内マンションで遺体見つかる 腐乱激しく身元確認のためDNA鑑定へ

  5. 10

    新横綱大の里が直面する「遠方への出稽古慣れ」…車での長距離移動は避けて通れない試練に