「晩夏光」池田久輝氏

公開日: 更新日:

<選考委員満場一致の期待の新星>

 第5回角川春樹小説賞受賞作品。「センチメンタリズムを描ききる力を感じた」(北方謙三氏)、「香港という街の匂いがひしひしと伝わってくる」(今野敏氏)など、選考委員であるハードボイルドの重鎮たちをうならせ、満場一致で決定したという。香港を舞台に描かれたハードボイルド群像劇だ。

「これまで、短編は何度か書いたことがありましたが、賞に応募しても落選していました。今回、1年ほどかけて書いた初めての長編小説を認めていただき、驚きとともに喜びを噛みしめています」

 主人公の新田悟は、香港の裏社会の組織で陳小生(チヤンシウサン)の“足”として働いている。この地には、観光客を標的にした「スリ」と、その盗品を売りさばく「露店」、そして盗品を回収して持ち主に返すことで謝礼を得る「回収」という3つのグループが共存していた。あるとき、新田と同様に陳の下で働いていた劉巨明(ラウゴイミン)が、何者かに射殺されるという事件が起こる。

「ミステリー小説を書いていた頃もあったんです。しかし、謎解きやトリックよりも、人間を深く掘り下げて描く方が書いていて面白いと感じるようになってきました。ハードボイルド小説は反道徳的な部分にばかり目が行きがちですが、男たちの生きざまが描かれる群像劇の要素も大きいと思うんです。今回の作品も、主人公は新田という男ですが、彼を通して香港の裏社会に生きるたくさんの男たちを俯瞰しながら、それぞれのキャラクターを丁寧に描くことを心がけました」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    尽きぬ破天荒エピソード…それでもショーケンが愛された訳

  2. 2

    河合優実が日本アカデミー賞「最優秀主演女優賞」の舞台裏…石原さとみと激しいガチンコ勝負

  3. 3

    教諭体制は日本一も…“国公立の雄”筑波大付属小の落とし穴

  4. 4

    「中居正広問題」ではノーダメージも、夫は吉本芸人…フジ山﨑夕貴アナの育休復帰は正解か

  5. 5

    やす子は人間不信に…友人から借金を頼まれたら「さっさと貸して縁を切る」という新発想

  1. 6

    男性キャディーが人気女子プロ3人と壮絶不倫!文春砲炸裂で関係者は「さらなる写真流出」に戦々恐々

  2. 7

    「石破降ろし」不発の裏でうごめく与野党の身勝手な思惑…野望ついえた安倍一派は“特大ブーメラン”に真っ青

  3. 8

    愛子さまに、佳子さまご結婚後も皇室に残る案が進展も…皇族数減少の課題にご本人の意思は?

  4. 9

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 10

    数年前から“終活”も 萩原健一さんの知られざる闘病生活8年