「書楼弔堂 破曉」京極夏彦著

公開日: 更新日:

■読まれぬ本を弔い、成仏させる「書楼弔堂」シリーズ第1弾

 時は明治20年代半ば。旗本出身の元武士、高遠は、時代の流れに乗れず、多少の財産があるのをいいことに、帝都の片隅で無為な日々を送っている。やることといえば、好きな本を読むことくらい。

 ある日、出入りの書店の丁稚小僧に教えられて、ヘンテコな本屋に足を踏み入れる。
 櫓(やぐら)か灯台のように見える3階建ての奇妙な建物で、入り口には「弔」の一字。薄暗い中に、古今東西のおびただしい書物が並んでいる。

 白装束をまとった店主は、「読まれぬ本を弔い、成仏させるのが我が宿縁」と、悩める客人を迎え入れ、読むべき一冊を探して差し出す。

「書楼弔堂」を舞台にした新シリーズ第1弾は6編。常連となった高遠を狂言回しに、実在の人物が客として登場する。血みどろの「無残絵」で知られる浮世絵師、月岡芳年。才能を開花させる前の若き泉鏡花。妖怪学を世に問うた仏教哲学者、井上円了。児童文学の扉を開いた巌谷小波。勝海舟やジョン万次郎まで現れる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾