「らんる曳く」佐々木中氏

公開日: 更新日:

■最近の純文学にはエロが足りない

 男は友人の提案で京都に移り、ふたりの女と出会い“堕落”していく。

「本当の意味はあべこべで、堕落を認めないことが過ちなんです。坂口安吾『堕落論』の通り、人間はそもそもぐうたらでだらしない。それを認めて肯定することが健康なんですよ。肉体は汚いものだし、汗も糞尿も垂れ流し、服も垢じみてボロになっていく。でもそういう時間の経過の中でしか未来をつくり出すことができない。それこそが堕落であると。ならば、堕落せよ、堕落を認めようと思うわけです。食べたり恋愛したりセックスしたり、生の営みそのものを肯定していこうと。死んだ妻もずっと操をたてろ、なんて思っていませんから。罪悪感も業も含めて、残された人間は生きていかなければいけないんですよ」

 震災文学であり、恋愛小説なのだが、読み手によっては印象が異なる。

「男のモテ自慢小説と言う人もいれば、同性愛小説と読む人もいる。僕は純然たるエロ小説だと思っています。最近の純文学にはエロが足りない、大江健三郎くらいまではよかったけれども、最近はこれみよがしのSMとか奇をてらったものばかりで、谷崎潤一郎のようなちゃんとしたエロはどこへいったんだ! と思っている諸兄に読んでいただきたいです(笑い)」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「ブラタモリ」抜擢の桑子真帆アナ “金髪チャラ系”の大学時代

  2. 2

    巨人に漂う不穏な空気…杉内投手チーフコーチの「苦言連発」「選手吊るし上げ」が波紋広げる

  3. 3

    大の里、豊昇龍の両横綱も戦々恐々…「新怪物」加入で躍進止まらぬ伊勢ケ浜部屋の巨大戦力

  4. 4

    82歳で死去の橋幸夫さんが日刊ゲンダイに語っていた「佐川急便事件」と「統一教会」のバッシング報道

  5. 5

    星野監督は中村武志さんを張り倒した直後、3ランを打った隣の俺にも鉄拳制裁…メチャクチャ痛かった

  1. 6

    御三家の生き残り舟木一夫の“傷だらけの人生”と、兄貴分だった故・橋幸夫さんも太鼓判のサバイバル術

  2. 7

    小祝さくらは「加齢の影響」漏らしていた…ツアー6週連続欠場の深刻度

  3. 8

    (1)身内すらも“監視し欺く”情報統制…機密流出犯には厳罰、まるで落合博満監督のよう

  4. 9

    元幕内照強の“しょっぱい犯罪”に角界も呆れた…トラブル多数現役時代の「ヤンチャ」な素顔

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋