「知の武装」手嶋龍一、佐藤優著

公開日: 更新日:

■外交ジャーナリストと元外務省主任分析官の対論集

 本書でいうインテリジェンスとは、単なる知性ではない。政治的リーダーが国家の命運をかけて決断を下す際のよりどころとなる情報を意味する。

 手嶋は、北朝鮮の偽ドルと兵器ビジネスの闇を描いたインテリジェンス小説「ウルトラ・ダラー」の著者。対する佐藤は、米ソ冷戦時代の末期にクレムリンの深層に迫ってインテリジェンス活動を行い、「外務省のラスプーチン」と呼ばれた人物。2人は対論によって共通認識を深め合い、ときに意見を異にしながら、日本が抱えている重大問題に肉薄する。アジア安保の視点から東京オリンピックを論じ、尖閣問題を東アジアの台風の目として注視し、TPPを「アジア半球」の視点から俯瞰する。

 2013年5月、飯島内閣官房参与が突然訪朝した。その際に撮られた一枚の会見写真を見ながら、2人が北朝鮮の思惑を読み解いていくさまは、「インテリジェンスのプリズム」を通してものを見るケーススタディーとして興味深い。

 精緻なインテリジェンスが随所に光る2人の対話は、雑多で膨大な情報に曇ったわれわれの視界を晴らし、国際社会の冷徹な現実を突きつける。外交ジャーナリストと元外務省主任分析官の対論集。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    六代目山口組・高山若頭の相談役人事の裏側を読む

  2. 2

    大物の“後ろ盾”を失った指原莉乃がYouTubeで語った「芸能界辞めたい」「サシハラ後悔」の波紋

  3. 3

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  4. 4

    フジ経営陣から脱落か…“日枝体制の残滓”と名指しされた金光修氏と清水賢治氏に出回る「怪文書」

  5. 5

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  1. 6

    上沼恵美子&和田アキ子ら「芸能界のご意見番」不要論…フジテレビ問題で“昭和の悪しき伝統”一掃ムード

  2. 7

    “路チュー報道”STARTO福田淳社長がフジ新取締役候補というブラックジョーク…堂本光一も痛烈批判

  3. 8

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希 160キロ封印で苦肉の「ごまかし投球」…球速と制球は両立できず

  5. 10

    ダウンタウン浜田雅功“復帰胎動”でまたも「別人疑惑」噴出か…中居正広氏「病後復帰」では陰謀論がワンサカ