「食彩の文学事典」重金敦之著
■雑煮の餅に挑戦した猫
文学作品に描かれた食の風景から、日本人が愛してきた食材や料理を語る文学エッセー。雑煮の項では、夏目漱石の「吾輩は猫である」の主人公の猫が、雑煮の餅に無謀にも挑戦する場面や、京都のすべてを愛しているが白みその雑煮だけは受け付けないと登場人物が語る北森鴻の「ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー」などを紹介。さらに、渡辺淳一が「雑煮の夫婦別れ」と表現し、團伊玖磨が「椀の中に日本中が映っている」と書き残したように、雑煮へのこだわりは、好みの問題ではなく、歴史と地理を物語っていることを明らかにしていく。
文士らのエピソードも豊富に250冊を読み解きながら、彼らが描いた豊かな日本食の世界を案内。
(講談社 1700円)