「池永康晟画集君想ふ百夜の幸福」池永康晟著

公開日: 更新日:

■画家とモデルとの濃密な時間が封じ込められた美人画集

 長年の試行錯誤の末にたどり着いた日本画技法を駆使して独自の世界を築いた美人画集。

 大胆な花柄、植物柄を背景に、同じく草花柄の衣装を身に着けた女性たちを描いたその作品は、褐色に染めた麻布にようやく見つけ出した肌色をのせ、「褐色と肌色とが織物」のような絵肌を持つ。色彩の鮮やかさを排し、セピア調の画面は、印刷されたページを通しても、どこかなまめかしい質感が伝わってくる。

 しゃがみ込み、髪を触りながらの思わせぶりの表情〈たくらむ〉や、あおむけに寝転び胸元に柔らかく手を置き一点を見つめる「恵美子」さん〈ふくらむ〉、軽やかに後ろ手に洋服の裾を摘まみ上げたり〈甘い風〉、ベッドの(ような)上でうつぶせから起き上がるように腕を立て上半身だけを持ち上げた「真喜子」さん〈蝋燭(ろうそく)〉など、描かれる女性たちは、表情やポーズを変え、何度も描かれる(〈 〉内はそれぞれの作品タイトル)。

 決して交わることがない、どこかじらすような、誘うような視線の女性たちのさまざまな表情を描いた作品は、軽やかに移ろいゆく彼女たちの感情の変化を描いているようにも感じられる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です