「幻影の明治」渡辺京二著
■風太郎作品で読み解く明治の変革期
副題は「名もなき人びとの肖像」。明治の変革期を生き抜いた人々に光をあて、日本の転換点を描き出す評論集。
冒頭の「山田風太郎の明治」の章では、何げなく手にしたが、その面白さから全巻を読了したという風太郎の明治開化期シリーズを読み解く。その面白さの秘密のひとつは「歴史上の著名な人物が物語の架空の仕組みの中で、虚構の人物たちと交わりあって動く」ことにあるという。樋口一葉を主人公にした「からゆき草紙」など一連の作品を読み進めながら、事実と虚構を巧妙に紡ぎ、時に当時の政治の深淵など明治新社会をリアルに描き出した風太郎の物語の根底にある批評性などを考察する。
(平凡社 2200円)