「許す力」伊集院静著

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■許せない感情を生きる力に変える法

 人気ベストセラー「大人の流儀シリーズ」の第4弾。長い人生のなかでさまざまな「許しがたい出来事」に遭遇した際、大人の男としてどのように対処するべきなのかをテーマに、著者の経験をひもときながらそのヒントを探ったエッセー集だ。

 著者にとって、「許すこと」の原体験は「決して人を羨んだり、人を恨んではいけません。そういうことをしていたら哀しみの沼に沈みますよ」という母親の言葉にあった。そして許せないという、その消すことができない感情を認め、許さなくてもいいからその感情を胸中に抱いたまま生きる方法を提案する。

 大切なのは、許せないものを目の前に引っ張り出して凝視しないこと。許せないものを抱えているのは決して自分ひとりではなく、誰もが生きている限り、許せないものに出合うものだと認識することが重要だという。傷ついた感情を回復するための安易な処方箋はないものの、どんなに哀しくてもそれを内にしまって、さまざまな事情を抱えていても平然と生きていく。そのような対処によって許せないことも、いつか生きる力になると、文面から静かに語りかけてくる。

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