「許す力」伊集院静著

公開日: 更新日:

■許せない感情を生きる力に変える法

 人気ベストセラー「大人の流儀シリーズ」の第4弾。長い人生のなかでさまざまな「許しがたい出来事」に遭遇した際、大人の男としてどのように対処するべきなのかをテーマに、著者の経験をひもときながらそのヒントを探ったエッセー集だ。

 著者にとって、「許すこと」の原体験は「決して人を羨んだり、人を恨んではいけません。そういうことをしていたら哀しみの沼に沈みますよ」という母親の言葉にあった。そして許せないという、その消すことができない感情を認め、許さなくてもいいからその感情を胸中に抱いたまま生きる方法を提案する。

 大切なのは、許せないものを目の前に引っ張り出して凝視しないこと。許せないものを抱えているのは決して自分ひとりではなく、誰もが生きている限り、許せないものに出合うものだと認識することが重要だという。傷ついた感情を回復するための安易な処方箋はないものの、どんなに哀しくてもそれを内にしまって、さまざまな事情を抱えていても平然と生きていく。そのような対処によって許せないことも、いつか生きる力になると、文面から静かに語りかけてくる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」

  2. 2

    円安地獄で青天井の物価高…もう怪しくなってきた高市経済政策の薄っぺら

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  5. 5

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  1. 6

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  2. 7

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  3. 8

    “第二のガーシー”高岡蒼佑が次に矛先を向けかねない “宮崎あおいじゃない”女優の顔ぶれ

  4. 9

    二階俊博氏は引退、公明党も連立離脱…日中緊張でも高市政権に“パイプ役”不在の危うさ

  5. 10

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明