「ノラや」内田百閒著

公開日: 更新日:

ユーモアあふれる内田文学を堪能

 夏目漱石門下の小説家であった著者による、猫にまつわる作品集。

 ある日、一匹の野良猫が庭にすみ着くようになる。“ノラ”と呼べば“ニャア”と返事をするその雄猫を著者は大層可愛がるが、3月の寒い午後、ふらっと出かけていって帰らなくなってしまう。仕事も手につかず、風呂場のふたの上に寝ていたノラの姿を思い出し、悲しくて寂しくて10日以上も風呂に入れなくなる。

 新聞に猫捜しの広告を出し、「ノラやノラや、お前はもう帰ってこないのか」と嘆き悲しんでいたときに、塀の上に現れた貧弱な野良猫。ノラを思いながら、クルツと名付けたその猫も可愛くなってきて……。

 猫好きならば百閒氏の思いが手に取るように分かる、切なくもおかしな14編。
(中央公論新社 724円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」