「青森縄文王国」新潮社編

公開日: 更新日:

■青森出土の遺物に縄文人たちのぬくもりを感じる

 青森県には1万年間も続いたという縄文時代の草創期から晩期まで三内丸山遺跡などの遺跡が点在し、縄文時代を代表する大きな文化が営まれていた。

 本書は、青森の各遺跡から出土した土器や土偶、石器などを通じて縄文の魅力を再発見してもらおうと企画されたビジュアルブック。考古学的な解説はほどほどに、それぞれの土器や土偶を作った縄文人たちのぬくもりを感じながら、遺物に秘められた物語を読み解いていく。

 例えば、幼児の手形、足形を押し付けて焼いた縄文時代後期の「手形付き土版」「足形付き土版」。写真で紹介されるのは六ケ所村の大石平遺跡から出土した完品だが、小牧野遺跡から出土したそれを手にすると、裏側に我が子の手足を取って粘土に押し付ける母親の指の痕跡が感じられるという。

 日本最古の土器も青森県から出土している。1万5000年前に作られたとみられるこの土器には何の文様もなく「無文土器」と呼ばれる。確認できる最初の文様は、粘土の紐を張り付けた「隆起線文土器」(六ケ所村表舘(1)遺跡から出土)。凝った文様をまとってはいるが、煮炊きの跡が残っており、1万年前の人々に湧き上がった「身近な道具を装飾する」という「芸術という営みの萌芽」が垣間見える。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった