「カラー版 廃線紀行 もうひとつの鉄道旅」梯久美子著

公開日: 更新日:

 廃線を歩けば、車窓から見える風景とはまた違った景色が見えてくる。雑草の陰に隠れたキロポスト、錆びた信号機や警報機、ホームの痕跡、そして線路跡が転用されたと思われる道路など、往時の姿を想像しながらの散策はまさに鉄道探偵の気分だ。

 意外にも東京にも廃線跡はある。国鉄越中島駅から延びる深川線から分岐した「東京都港湾局専用線 晴海線」だ。

 かつて「陸軍鉄道聯隊」が配備されていた千葉公園には、演習で構築されたわずか数メートルのトンネルが残り、奇妙な景観をつくりだしている。

 かと思えば、廃止後にほぼ全線が自転車専用道に整備され、廃線サイクリングが楽しめる「大分交通耶馬渓線」などの「絶景廃線」もある。その他、琵琶湖疏流の水位の差が大きくて船が運航できない区間に敷設された、船を運ぶための鉄道「蹴上インクライン」といった変わり種、そして100年以上も昔の明治40年に廃止され今はハイキングコースとして親しまれる「関西鉄道大仏線」など。

 廃線歩きは、水平方向に移動する地理的な旅だが、「過去に向かって垂直方向にさかのぼる歴史の旅」でもあると著者は語る。土地土地に記憶された歴史に思いを馳せながらの廃線歩き、意外にも手軽なコースも多数あり、ひとたび歩き始めたら癖になりそうな魅力に満ちている。(中央公論新社 1000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?