日本で初めてテレビドラマが放映されたのは、昭和15年4月20日のことだ。この年は神武天皇が即位して2600年に当たる〈紀元2600年〉で、東京五輪などの祝賀行事が予定されていた。国威発揚のため、東京五輪をテレビで中継することになったのだ。
テレビの開発に当たっていた旧制浜松高工助教授・高柳健次郎が抜擢されて研究を進め、実用化のめどがついたが、戦局の悪化により五輪開催を返上することに。昭和15年には左翼劇団によるテレビドラマ「夕餉前」が放映されたが、戦争が激化すると、出演者に特高の手が伸びるようになった。
国家プロジェクトだったテレビ実用化のドキュメント。(講談社 1600円+税)