「メビウス1974」堂場瞬一著
42年ぶりにかかってきた吉塚佐知子からの電話で、下山英二は上京して旧友の村木と再会した。3人は学生運動の活動家だったが、彼らの属するセクトが企業爆破事件を起こしたとき、その被害に怯えた下山は誰にも告げずに失踪した。そのため彼らの活動は崩壊したのだった。
村木に指定されたバーに向かう途中、立ち寄った書店で、下山は当時の恋人だった伊崎久美子の名が文芸誌の表紙に載っているのを見る。さらに彼を追っていた元公安の刑事、安永に声をかけられる。何かが自分を過去に引き戻そうとしている。これらは偶然の出来事なのか?
過去の決算を迫られる男を描くエンターテインメント。(河出書房新社 1600円+税)