「がんでも、なぜか長生きする人の『心』の共通点」保坂隆著

公開日: 更新日:

 日本人の2人に1人が一生のうちにがんを経験するといわれる近年、注目が高まっているのが、「精神腫瘍学」だ。がんと心の関係を研究する学問であり、心のあり方が、がん治療そのものを左右することが明らかになってきた。

 がん患者の2割がうつ病を併発しているというデータがあるが、うつ病は免疫機能を低下させ、がん細胞と戦うナチュラルキラー細胞の活性度も急降下させる。結果、うつ病を併発している患者の方が転移や再発の確率が高まったり、寿命にも悪影響を及ぼすことが分かっているのだという。

 本書では、精神腫瘍学の第一人者が、がんと診断されたときの心の持ち方を伝授。例えば、がんが分かったとき大抵の患者は「自分の何がいけなかったのか」と考えがちだが、“原因”を追求したところで得るものはほとんどない。それよりも、がんになった“意味”を考えるようにし、がんを通して学ぶべきことを追求する。これは、うつ病対策にも有効だ。

 SNSを通じて「がん友」とつながることもお勧めだという。体験や不安をシェアすることは、孤独になりがちな心を支える大きな力となる。心が体にもたらす影響を、再認識させられる。(朝日新聞出版 1000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する