「サロメ」原田マハ著
ロンドンで画家オーブリー・ビアズリーを研究している甲斐は、オスカー・ワイルドの研究者ジェーンから見てほしい資料があると頼まれる。19世紀末のイギリスに彗星のごとく現れたビアズリーが画家として活躍したのは、25歳で亡くなるまでのわずか5年間。その代表作となったのが、異端の文学者ワイルドが執筆した戯曲「サロメ」に提供した挿絵だった。ジェーンが甲斐に差し出したのは古いバインダーだった。パリの劇場の床下から見つかったというそれには、ビアズリーの姉・メイベルの視点で描かれた、ある物語が認められていた。
19世紀末のトリックスター、オスカー・ワイルドと、夭折の天才画家ビアズリーの関係を描く長編小説。(文藝春秋 1400円+税)