踊って跳ねて現世の染みを振り落とせ

公開日: 更新日:

「死してなお踊れ一遍上人伝」栗原康著

 鎌倉時代の僧侶・一遍上人の生涯を冗舌な文体で描いた画期的評伝。

 一遍の思想を一言で言うと「捨ててこそ」だと著者はいう。現世では、人はどうあがいても仕事の世界にとらわれる。武士の家に生まれた一遍も、家を守ることに追われ、親戚の所領争いに巻き込まれた末に命まで狙われる。そんな息苦しさから逃れようと、家も妻子も捨て出家。全部捨てれば仏のように、縛られることなく自由に生きることができると考えたのだが、現実はそうはいかなかった。人は現世に生きながらにして往生できるはずなのに。行き詰まった一遍は、自分の体に染みついた現世を踊って跳ねて振り落とそうとする。踊り念仏の誕生だ。

 一遍上人の破天荒な生きざまに、有用性や上昇志向に絡めとられた自分の人生をふと振り返る。(河出書房新社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束