踊って跳ねて現世の染みを振り落とせ

公開日: 更新日:

「死してなお踊れ一遍上人伝」栗原康著

 鎌倉時代の僧侶・一遍上人の生涯を冗舌な文体で描いた画期的評伝。

 一遍の思想を一言で言うと「捨ててこそ」だと著者はいう。現世では、人はどうあがいても仕事の世界にとらわれる。武士の家に生まれた一遍も、家を守ることに追われ、親戚の所領争いに巻き込まれた末に命まで狙われる。そんな息苦しさから逃れようと、家も妻子も捨て出家。全部捨てれば仏のように、縛られることなく自由に生きることができると考えたのだが、現実はそうはいかなかった。人は現世に生きながらにして往生できるはずなのに。行き詰まった一遍は、自分の体に染みついた現世を踊って跳ねて振り落とそうとする。踊り念仏の誕生だ。

 一遍上人の破天荒な生きざまに、有用性や上昇志向に絡めとられた自分の人生をふと振り返る。(河出書房新社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  2. 7

    白木彩奈は“あの頃のガッキー”にも通じる輝きを放つ

  3. 8

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  4. 9

    12.2保険証全面切り替えで「いったん10割負担」が激増! 血税溶かすマイナトラブル“無間地獄”の愚

  5. 10

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?