「生命の内と外」永田和宏著
「ミトコンドリア」や「オートファジー」など、21世紀に入ってから、より詳しく細胞の働きを知り、その異変に気付かなければ病気を治すことができないという事実がわかってきた。
その際、欠かせないのが私たちの生命を維持させている「膜」の存在だ。
「膜」は閉じつつ開きながら必要なものを摂取し、不要なものを拒み、排除している。
恒常性とは、そうして生命を維持させていくシステムのことだ。
日本を代表する細胞生物学者がこの摩訶不思議な働きについて平易な文章でわかりやすく説明してくれる。文中では、科学知識を持ちながらそれを実際の生活に生かせず、広告にのせられている“いまの風潮”に苛立ちを見せているのも面白い。(新潮社 1300円+税)