「美酒と黄昏」小玉武著

公開日: 更新日:

 植草甚一がワセダの学生だったころ、不良詩人のサトウハチローの出版記念会に行った。上野広小路のバー、紅葉軒で赤い酒、青い酒を飲み、エノケンにサインをもらった。帰りに新宿で私服の刑事にアカと疑われてなぐられ、さらに友人に誘われて吉原に登楼。その後、かなり飲んだが酔わなかった。内藤鳴雪の〈大盃落花も共に呑み干しぬ〉という句が身に沁みた。前年の暮れに読んだヴァン・ダインの「僧正殺人事件」の感動を思い出し、自分らしく自由に生きようと思った――。

 戦後の一世代のミステリーファンの「神様」だった「植草甚一」がこの日、生まれた。(「紅灯緑酒」)

「サントリー・クォータリー」元編集長の文芸エッセー。(幻戯書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  3. 3

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 4

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  5. 5

    (5)「名古屋-品川」開通は2040年代半ば…「大阪延伸」は今世紀絶望

  1. 6

    「好感度ギャップ」がアダとなった永野芽郁、国分太一、チョコプラ松尾…“いい人”ほど何かを起こした時は激しく燃え上がる

  2. 7

    衆院定数削減の効果はせいぜい50億円…「そんなことより」自民党の内部留保210億円の衝撃!

  3. 8

    『サン!シャイン』終了は佐々木恭子アナにも責任が…フジ騒動で株を上げた大ベテランが“不評”のワケ

  4. 9

    ウエルシアとツルハが経営統合…親会社イオンの狙いは“グローバルドラッグチェーン”の実現か?

  5. 10

    今井達也の希望をクリアするメジャー5球団の名前は…大谷ドジャースは真っ先に“対象外"