「なんとめでたいご臨終」小笠原文雄著

公開日: 更新日:

 人生の終わりには住み慣れた家で息を引き取りたいと願いながらも、約75%は病院で死を迎えるという。家族に迷惑をかけるから、お金がかかりそうだから、ひとり暮らしだからと、在宅でのみとりを諦めてしまうらしい。しかし医師として在宅みとりを1000人以上経験してきた著者は、最期まで家で生きられると力説する。

 本書では、望み通り在宅で臨終を果たした45人の事例を紹介。本人や家族が望む「めでたい死」はどのように実現するのか、その経緯がわかるようになっている。

 たとえば、肝がんで骨転移していた89歳のひとり暮らしの女性の場合、年金から家賃を引いて1カ月約4万円で暮らさなければならなかったため治療費も払えないと絶望していた。ところが著者に出会い、在宅ホスピスの緩和ケアを開始。70歳以上の低所得のがん患者だったため、自己負担額も月最大8000円で済み、経済的な不安も痛みもなく旅立つことができた。

 ほかにも気管切開して痰の吸引処置が必要な人、急性白血病で輸血が必要な人、認知症の人などの在宅みとり事例がずらり。今までの常識が覆されること必至だ。

 (小学館 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝