「維新の羆撃ち」経塚丸雄著
五稜郭の戦いに敗れ、兄と本多佐吉とともに逃れてきた奥平八郎太。彼の前に立ちふさがったのは、口元を血で染めた巨大なヒグマだった。深手を負った八郎太は猟師の十蔵、喜代夫婦に助けられ、鉄砲で撃たれた右腕を切り落とされて命拾いする。八郎太はヒグマに殺された佐吉の墓を作り、十蔵の手伝いをして暮らすが、結核で先の短い十蔵に、小屋も火縄銃も譲るから喜代と夫婦になれと言われ、その頼みを聞き入れる。八郎太は、十蔵から兄の喜一郎が新政府軍に投降したことを聞き、動揺する。開拓使庁の役人となった兄との再会で、八郎太は新しい時代と対峙することに。
武士の価値観を捨てることを迫られる男を描く時代小説。
(河出書房新社 1500円+税)