老人ばかりのオーケストラに間違って入団し…

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「オケ老人!」荒木源著/小学館文庫 695円+税

 現在日本には、アマチュアオーケストラがざっと1000団体以上あるといわれている。むろん、その中にはプロに近い実力を持つオーケストラもあれば、部活動の延長のようなものもある。本書に登場するのは、そのピンとキリの両極端、しかも同じ町に存在し、もとはひとつのものが分裂したという因縁のあるふたつのオーケストラである。

【あらすじ】中島は高校の数学教師。学生時代にオーケストラでバイオリンを弾いていたが、しばらく音楽から離れていた。ある日、市の文化センターで開催していたコンサートを聴き感動した中島は、再びオーケストラで演奏したいと思い立つ。

 早速「梅が丘」という名を頼りに検索し、入団したい旨を伝えると、即OKの返事を得る。いぶかりながらも翌日練習場に赴くと、そこには立っているのも危ぶまれるような老人ばかり。昨日聴いたはつらつとしたオーケストラとはまるで違う。実は中島が聴いたのは梅が丘フィルハーモニー(梅フィル)で、今いる梅が丘交響楽団(梅響)から分かれたものだという。

 結局、中島は最年少メンバーとして指揮も任されることに。とはいえ梅響の実力は惨憺たるもの。嫌気が差し逃げだそうと思う中島だが、徐々に梅響メンバーの音楽へのひたむきさに打たれていく。 一方、梅フィルは、ある出来事をきっかけに梅響に対して嫌がらせを始め、それは商店街を巻き込む争いに発展していく。さらにロシアからのスパイが、この争いに絡んでくるという事態に……。

【読みどころ】昨秋公開された同名映画の原作。映画では杏が主役で、女性が主人公になっている。男女が変わるだけで、だいぶ味わいも違ってくるもので、本と映画、比べてみることをおすすめする。 <石>

【連載】音楽をめぐる物語

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