「クリスパー 究極の遺伝子 編集技術の発見」ジェニファー・ダウドナ著

公開日: 更新日:

 まったく新しい遺伝子編集技術「クリスパー・キャス9」を開発し、「ノーベル賞も間違いなし」といわれる女性研究者が書いた本。クリスパー・キャス9は、ワープロで文章を編集するように人類を含む地球上のすべての生物の遺伝子コードを操作し、変更できる技術。

 すでにこの技術で筋肉発生を制御する遺伝子の塩基配列を1文字換えるだけで、筋肉ムキムキのビーグル犬をつくりだし、大型猫ほどの大きさのペット用ブタを誕生させ、病気に強いイネや日持ちのするトマト、有毒成分の少ないジャガイモが生み出されている。ブタの遺伝子を「ヒト化」し、動物の臓器を人間に移植する実験や病気を媒介する蚊を絶滅させるための新しい系統の蚊をつくる研究も進んでいる。もちろん、人間の患者の変異遺伝子を直接編集することで病気を治すこともできる。

 人類が10万年かけてランダムな突然変異と自然選択により形成されてきた遺伝子を今後は簡単に望む方向に変えることができる。それは危険ではないか? 優生学の復活など革新的技術の開発者だからこそ感じる新技術の期待と危惧をつづっている。

(文藝春秋 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度不倫の山本モナ 年商40億円社長と結婚&引退の次は…

  2. 2

    日本ハムFA松本剛の「巨人入り」に2つの重圧…来季V逸なら“戦犯”リスクまで背負うことに

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    「ばけばけ」好演で株を上げた北川景子と“結婚”で失速気味の「ブギウギ」趣里の明暗クッキリ

  5. 5

    「存立危機事態」めぐり「台湾有事」に言及で日中対立激化…引くに引けない高市首相の自業自得

  1. 6

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  2. 7

    (2)「アルコールより危険な飲み物」とは…日本人の30%が脂肪肝

  3. 8

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  4. 9

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 10

    高市政権の物価高対策はパクリばかりで“オリジナル”ゼロ…今さら「デフレ脱却宣言目指す」のア然