「クリスパー 究極の遺伝子 編集技術の発見」ジェニファー・ダウドナ著

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 まったく新しい遺伝子編集技術「クリスパー・キャス9」を開発し、「ノーベル賞も間違いなし」といわれる女性研究者が書いた本。クリスパー・キャス9は、ワープロで文章を編集するように人類を含む地球上のすべての生物の遺伝子コードを操作し、変更できる技術。

 すでにこの技術で筋肉発生を制御する遺伝子の塩基配列を1文字換えるだけで、筋肉ムキムキのビーグル犬をつくりだし、大型猫ほどの大きさのペット用ブタを誕生させ、病気に強いイネや日持ちのするトマト、有毒成分の少ないジャガイモが生み出されている。ブタの遺伝子を「ヒト化」し、動物の臓器を人間に移植する実験や病気を媒介する蚊を絶滅させるための新しい系統の蚊をつくる研究も進んでいる。もちろん、人間の患者の変異遺伝子を直接編集することで病気を治すこともできる。

 人類が10万年かけてランダムな突然変異と自然選択により形成されてきた遺伝子を今後は簡単に望む方向に変えることができる。それは危険ではないか? 優生学の復活など革新的技術の開発者だからこそ感じる新技術の期待と危惧をつづっている。

(文藝春秋 1600円+税)

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