「崩れる脳を抱きしめて」知念実希人著
研修医の碓氷蒼馬が勤務する「葉山の岬病院」は裕福な患者が心静かに最期を迎えるためのホスピスだった。担当した弓狩環はいつ脳出血を起こすか分からない難病の腫瘍に侵されていた。環は巨額の奨学金を返済しなくてはいけない碓氷に、自分の病室の机で勉強してもいいと言う。
気難しい環は、やがて碓氷に同行を頼んでしばしば外出するようになる。碓氷は自分が環を愛していることに気づくが、研修を終えて広島の病院に勤務していたとき、環が死んだことを知る。岬の病院に駆けつけると、なぜか院長は碓氷が環の担当だったこと、2人が過ごした時間を否定する。あれは碓氷の妄想だったのか。
甘美な愛のミステリー。
(実業之日本社 1200円+税)