「読みくらべ世界民話考」野中涼著

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 人から人へと語り継がれてきた民話には、世界各地で共通するテーマが見られるという。本書は、「無理やりな結婚」「変身する求婚者」「運まかせの人生」「金銭の魅惑」「詐欺師の良心」など、共通する23のテーマを挙げて、世界にどんな民話があるのかを紹介した意欲作。

 たとえば、「超自然の援助者」では、ドイツの民話の「靴づくりの妖精」の話が紹介されている。貧しい靴職人のもとに妖精が現れ、寝ている間に靴を仕上げてくれるという有名な話だが、日本には望むものは何でもかなえる「竜宮童子」、スコットランドには困っている人を助けてくれる「エイキン・ドラム」という似たような話が存在する。

 救世主として現れるこれらの援助者は、小人だったり不潔だったり普通ではない部分があり、状況が改善された途端、姿を消してしまうなどの共通項もあった。

 世界の民話を通読すると、人類共通の不安や葛藤、喜びや悲しみ、願望や教訓などが見えてくる。

(松柏社 3800円+税)

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