「鬼の家」花房観音著
実業家の吉二郎に見初められ結婚した桜子は、京都の千本通の屋敷で不自由はないが、退屈な生活を送っていた。
ある夜、桜子は屋敷の前にある桜の木で行き倒れている美男子の李作と地味な女・梅の夫婦を発見。屋敷に招き入れたところ、居ついてしまい、やがて夫婦は使用人として働きだす。
外出がちだった吉二郎は梅の料理を気に入り、早く帰宅するようになる。しかし突如、溺死。桜子と李作は互いの体に溺れるが、李作が桜子を抱くときに黒い影が現れるようになる。果たして黒い影は吉二郎なのか。桜子は李作に抱かれながら「吉二郎を殺したんは、李作か梅やろ」とつぶやくのだった。(「桜鬼」)
屋敷に暮らす人々を次々に襲う「異形」を描く6編の恐怖譚。
(KADOKAWA 1550円+税)