「作家と楽しむ古典」堀江敏幸ほか著

公開日: 更新日:

 紀貫之の「土左日記」は、学校では「土佐日記」と表記し、ゆえに土佐から京への帰路の旅を日記風につづったものと教えている。しかし自筆原本は「土左日記」であり、あえて音だけ同じ「とさ」としたのは、この物語が最初から虚構であることを示す徴だという。

 また、冒頭は「男が書くという日記というものを女の私もやってみようと思って」と訳されているが、当時、漢字を読み書きできたのは一部の男性だけだった。

 しかし平仮名が生まれたことで女性も表現方法を得たという背景に照らし合わせ、「男が漢字を用いてしるす日記というものを、私はあえて女文字の仮名書きでしるしてみたい」と訳すのがピッタリではないか――(堀江敏幸)。

 古典新訳を手掛けた作家たちが、作品をどうとらえたかを語る古典案内。ほか「枕草子」(酒井順子)、「徒然草」(内田樹)など全5作を収録。(河出書房新社 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    清原和博氏が巨人主催イベントに出演決定も…盟友・桑田真澄は球団と冷戦突入で「KK復活」は幻に

  2. 2

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  3. 3

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 4

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  5. 5

    日銀を脅し、税調を仕切り…タガが外れた経済対策21兆円は「ただのバラマキ」

  1. 6

    巨人今オフ大補強の本命はソフトB有原航平 オーナー「先発、外野手、クリーンアップ打てる外野手」発言の裏で虎視眈々

  2. 7

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 8

    林芳正総務相「政治とカネ」問題で狭まる包囲網…地方議員複数が名前出しコメントの大ダメージ

  4. 9

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  5. 10

    角界が懸念する史上初の「大関ゼロ危機」…安青錦の昇進にはかえって追い風に?