「薩摩の密偵桐野利秋」桐野作人著
薩摩藩士・中村半次郎、のちの桐野利秋(1838~77年)の生涯を新たな視点で描く評伝。
剣客として「人斬り半次郎」の異名を持つ桐野だが、史料では彼がむやみに人を斬った事例は見いだせないという。幕末の激動のさなか、桐野は神出鬼没の密偵として活躍。薩摩藩の情報戦を支える一方で、藩内に潜入する密偵を探知、排除する防諜活動を行っていたというのだ。
その諜報活動がもっとも効果を上げたのは一時期激しく敵対していた長州藩に対してだった。有名な赤松小三郎殺害も、防諜活動の一環としての公務だったと思われると指摘。その密偵としての活躍から、維新後の陸軍少将への大出世、そして西南戦争での最期まで。幕末明治のキーパーソンの実像に迫る。
(NHK出版 820円+税)