「聖者が街にやって来た」宇佐美まこと著

公開日: 更新日:

 神奈川県多摩川市の中央に位置する湧新地区は企業誘致に成功し人口が急増、それに伴い犯罪も増えている。この街で花屋を営む小谷桜子。娘の菫子は17歳で、市が主催するミュージカルのオーディションに受かり、来るべき公演に向けて日々練習に励んでいた。そんな折、3人の若い女性が立て続けに襲われる殺人事件が発生。殺害方法は違うが、遺体のそばにはそれぞれに異なる花びらが置かれていた。桜子の高校時代の同級生で刑事の乗松は同一犯の仕業と見抜くが、それ以上の手がかりはなく捜査は暗礁に乗り上げていた。

 街に不穏な空気が漂う中、今度は菫子がストリートギャングに拉致され、危ういところを助け出される。おまけに菫子の出演するミュージカルの音楽監督の与謝野が暴行を受け、意識不明の重体に陥り、ミュージカルの開催が危ぶまれる。花びらが置かれた2件の殺人事件も新たに起こり、事態は混沌を極めていく――。

 柔道の強いオカマ、感情が欠落したマッドサイエンティストなど個性的な人物を配しながら、LGBT、危険ドラッグ、ネグレクトなど、日本社会の暗部を照らし出す長編ミステリー。

(幻冬舎 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に