コロナ禍で外食できない今こそ食を見直す本特集

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「体がバテない食薬習慣」大久保愛著

 度重なる緊急事態宣言で外食自粛が続き、家で作って食べる機会が増えている。コロナ前は意識していなかったが食材に関心を持つようになったという人や、料理が趣味になったという人も多いのではないだろうか。そこで今回は、プロの料理論から季節に合った食材選びの知恵まで、改めて食について考えるために役立つ5冊を紹介する。



「心の疲れ」に焦点をあてた前著がベストセラーとなった漢方カウンセラーが、本書では季節によって変わる「体バテ」に着目。その月、その週に適した食材を紹介する。

 低気圧がやってくる6月は、体にかかる圧力が低くなるため細胞の水分は外側に向かい、体がむくむ。また空気の濃度も薄くなって自律神経が乱れ、だるさや眠気を感じやすくなる。さらに、雨で運動不足になると、筋力の低下や体のゆがみで内臓が下がり、代謝も低下する。

 そんな6月には、漢方でいう余分な水分の「痰湿」を取り除く食材を多くとるといい。例えば、ソラ豆。毛細血管を広げることで血流を促し、代謝を高めてくれる。また、キャベツもおすすめ。胃腸の働きに有効で、活性酸素の発生を防ぐ若返り遺伝子を活性化させて炎症を抑える効果が期待できる。季節に合った食材を選び、バテない体を手に入れよう。

(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1650円)

「シェフたちのコロナ禍」井川直子著

 緊急事態宣言で狙い撃ちされてきた飲食店は、コロナ禍をどう生き抜いているのか。渋谷で昭和25年から店を構えてきた焼き鳥「鳥福」。最初の緊急事態宣言が出た2020年4月7日、店を完全休業することに決めた。2坪2階建ての狭い店舗では客を守るにはその道しかないと判断した。戦後の混乱期からオイルショック、バブル崩壊などを乗り越えてきた同店である。「また来たな」という感覚で、あてにできない政府にジリジリするよりも身銭を切って乗り切るのが個人事業主のやり方だと語る。

 縮小して店を開けるという道を選んだ飲食店も少なくない。イタリア料理店「TACUBO」のオーナーシェフは、7人の従業員の雇用を守るため、厳しい座席制限と換気などを徹底して営業にのぞんだ。生産者の生活を守るためにも腹をくくって店を開けると語る一方、正解は分からないと苦悩ものぞかせる。苦境の中で戦う店主たち34人の声が詰まったルポだ。

(文藝春秋 2090円)

「料理と利他」土井善晴、中島岳志著

 料理研究家と政治学者という異色の組み合わせによる本書は、オンライン対談「一汁一菜と利他」の書籍化。料理論を哲学にまで落とし込み、作るとは、食べるとは何かを教えてくれる。

 大学で「利他」を研究テーマとしている中島氏は、土井氏の著書「一汁一菜でよいという提案」を参考にしているという。そこに土井氏の考える利他への思いが読み取れるためだ。

 こと家庭料理に関しては、料理するという行為そのものが愛情であり、料理する=愛している、料理を食べる=愛されているという関係性が成り立つ。家庭で料理をする人ほど、そのことを知っていると本書。

 とはいえ、肩ひじ張って豪勢な料理を作る必要はない。本書では、ハレの日の料理である「里芋の含め煮」と、日常の料理である「里芋の煮転がし」のレシピなどを対比しながら、家庭料理の本質に迫っていく。

 料理を作る喜び、そして作ってもらう喜びを再確認できる。

(ミシマ社 1650円)

「人と食材と東北と」高橋博之監修

 東日本大震災後に発行され、“つくる人と食べる人”をつないできた情報誌「東北食べる通信」。本書では、同誌が取り上げてきた東北6県の生産者と、食材の魅力を紹介している。

 同誌の元読者だという大友さんは現在、福島県会津若松市でトマト農家を営んでいる。東京生まれで農家とは無縁の人生だったが、妻が会津若松出身で、義父がトマト農家だった。しかも、「これからは量より質だ」という思いのもと、樹上で完熟させる品種にシフトし、農協を通さず販売するやり方を模索していることを知った。

 都会の営業マンだった大友さんは、トマトの販路拡大を手伝いながら、東北各県には若手農家が数多くいることを知り、ついに自身も就農に至ったという。大友さんの樹上完熟トマト「麗夏」を使った炊き込みご飯やハチミツ漬けなどのレシピも掲載。他にも、山形の里芋に秋田のぶどうなど、生産者の思いが伝わる20のストーリーを紹介している。

(オレンジページ 2530円)

「78歳のひとり暮らし」村上祥子著

 料理研究家歴50年のキャリアを持つ著者。3人の子供を育て、夫をみとり、現在も仕事を続けながら「ちゃんと食べて、ちゃんと生きる」をモットーに活動している。本書では、その自由な日々をつづりながら、働き盛りの世代でも真似したい簡単手軽な料理のレシピを紹介している。

 ひとり暮らしとなり、著者も毎日3食作るのは面倒に感じたという。しかし、そこはさすが料理研究家。編み出したのが「1人分冷凍パック」だ。作り方はいたって簡単で、フリージングバッグの中に肉か魚などのタンパク質食材50グラム、野菜100グラムを食べやすい大きさに切って入れて冷凍しておくだけだ。例えば、豚肉、赤パプリカ、たまねぎ、ワカメの冷凍パックなら、4分間レンチンしてパクチーとナンプラー、ラー油をかければベトナム風サラダの出来上がりとなる。

 個食時代のレシピは簡単・手抜きがよいと著者。見習いたい料理や食べ方の工夫が満載だ。

(集英社 1760円)

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