「荘園の人々」工藤敬一著

公開日: 更新日:

 各時代の荘園と、そこに生きた実在の人物にスポットを当て、その歴史を解説するテキスト。

 大仏完成後、鎮護国家の総本山となった東大寺が8世紀半ばから9世紀はじめにかけて設定した、いわゆる初期荘園は92荘4800町にのぼり、そのうち31荘が北陸3国に集中。越前の東大寺領荘園の経営の中心的役割を果たしたのが在地豪族の生江臣東人という人物だという。東人は荘園の開発に自らの資本を投入するが、官衙(かんが=役所)の造東大寺司は東人らの私的支配を持ち込ませず、古代的直接経営を志向する。それが成立したのは背後に国家権力があったからで、経営の主体が東大寺に移されると、これらの荘園は急速に衰退する。

 以後、16世紀の九条家領日根荘(ひねのしょう)まで、9つの荘園とその人間ドラマから荘園の歴史を解き明かす。

(筑摩書房 1100円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」