谷口功一(東京都立大学法学部教授)

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12月×日 NHKの朝ドラ「ばけばけ」が面白い。主演の高石あかりは以前から注目していた女優だが、映画「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ(阪元裕吾監督)でも光っている。女性が圧倒的な暴力を振るう系のコミカルな作品なので、ぜひ皆に観てほしい。

 最近SNSで頻繁に流れて来る「みいちゃんと山田さん」(亜月ねね著 講談社)というマンガ、家族に勧められ既刊分(4巻まで 各792円)を一気読みしてみた。

 カワイイ絵柄だが、近親相姦で生まれた知的障害のある少女がキャバクラから風俗へと墜ちてゆき、最後には殺されるという話だ。

 私の歳になるとドギツイ話は、もう余り読みたくないのだが(飽きたのもある)、キチンとしたストーリー展開もあり、作者のSNSでの投稿が10億インプレッションを超えているなど広く話題を呼んでいる点で、興味深い作品である。

 このような話が一般読者にも知られる形で描き出されたのは2006年に刊行された山本譲司著「累犯障害者」(新潮社 文庫版737円)を嚆矢としている。そこでは「矯正統計年報」を引きながら、新受刑者に占める知的障害者(IQ69以下)の割合の話から始まり、先述の「みいちゃん~」でも描かれた知的障害者女性と性産業との関わりなどが既に20年前に描き出されているのだった。

 約20年前、上智大学の町野朔教授(刑法)が主宰していた「心神喪失者等医療観察法」関連の研究会で聞いた、さまざまな話なども思い出す。たとえば、触法精神障害者のうち少なからぬ者が、その家族もまた同様の障害を抱えているために、初手から福祉との接続が完全に切れてしまっているという話などだ。

 近年、日本社会も社会階層の分化が進展しつつあり、社会的底辺層に対する苛烈な言説を耳目にすることが多くなったが、100年以上前に大刑法学者フランツ・フォン・リストが喝破したように「最良の刑事政策とは最良の社会政策である」ことが思い出されても良いのではないかと思う歳末である。

【連載】週間読書日記

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