「檸檬の棘」黒木渚著

公開日: 更新日:

 父親が死んだ。戸籍上の他人になった10年前から、父親を徹底的に拒絶しようと決めて生きてきた栞は、だから葬式にも参列しなかった。死の1カ月前、末期がんで緩和ケアに入っていると聞いたが、見舞いにも行かなかった。父親への強烈な怒りを糧に生きてきた栞は、うかつに同情などしたくなかったからだ。

 田舎町で育った栞は小学校卒業と同時に家を離れ、県外の私立の女子中高一貫校に入学。寮生活を送っていた栞の知らないところで家族は終わった。最後にあの家に漂っていた空気も、交わされた会話も知らないまま突然「終わった」という事実を受け取り、なす術もなかったのだ……。

 歌手、そして作家として活躍する著者が、父親への屈託を抱え生きてきた自らの青春時代を独特の文体でつづった私小説。

(講談社 704円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  4. 4

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  2. 7

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  3. 8

    Snow Manの強みは抜群のスタイルと、それでも“高みを目指す”チャレンジ精神

  4. 9

    小室眞子さん最新写真に「オーラがない」と驚き広がる…「皇族に見えない」と指摘するファンの残念

  5. 10

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か