「ある愛の寓話」村山由佳著

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 50代の「私」は、病気のため、人の顔が覚えられなくなった。

 子どもの頃、貿易の仕事をしていた父が外国で買ってきたカエルのぬいぐるみを「エル」と名づけて大切にしていた。エルは誰にも言えない思いを打ち明けられる大切な友達だった。

 大学を卒業して就職したが、過労で体調を崩し、母に勧められて海外旅行に。風景の中にエルを置いて写真を撮っていたとき、カメラをひったくられるが、関西弁の美大生に助けられる。いつもエルを手放さない彼女を、彼は笑わなかった。

 帰国してから2年後に彼と結婚したが、今は彼の顔も名前も分からない。家にいるかどうかも分からない。(「晴れた空の下」)

 ほかに、捨て猫や恋人の飼い犬など身の周りのものに向けた愛を描く6編の短編小説。

(文藝春秋 1870円)

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