速読をテーマにしたミステリーにワクワク「本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件」白井智之著
「本を読むのが超速い人の頭の中ってどうなってんの殺人事件」白井智之著
珍妙なタイトルである。だがこの小説はタイトルだけでなくサイズも変だ。文庫よりも小さいA7サイズ。ポケットティッシュと同じぐらい。最近映画化された「口に関するアンケート」もそうだが、これぐらい小さい小説は書店で並ぶとほかと比べて目立って売れやすい。新しい戦略と言えよう。
私自身も読むのは人より多少速い方である。中学時代の学習塾でPCを使った速読トレーニングの授業があり、問題文を読むのが速くなったが、頭は良くなってないので試験会場で誰よりも諦めるのが早くなっただけだったが……。速読をテーマにしたミステリーは初めてだったのでワクワクして読めたし、ミステリー界隈で評価が高い白井さんの新作なので、さすがの切れ味だった。
本好きの刑事、綴木(つづき)はとある殺人事件の捜査を担当する。被害者は紙林育、現場は被害者の叔父、新垣隼風(はやて)がつくった会社アラガキリーディングスピードのオフィス。新垣隼風は元々は山寺の僧侶だったが、事典のように分厚い本を数十秒で読み切ってしまう驚異の速読術が話題となり、メディアに引っ張りだこ、セミナーを開き、書籍も売れたカリスマ的存在。そんな新垣が果たしてこの事件に関わっているのか。
時を戻して、小学生の少年、青空(そら)は、地球防衛軍戦略部の司令官、ミスター・セルライトなる謎の人物に誘導され、この殺人事件を目撃することになる。被害者はヘルメットをかぶった殺人者が部屋に入る前、物凄い速さで読書をしていたという。被害者の育は叔父と違って、速読は出来ない。これは一体どういうことなのか……そして犯人は一体誰なのか。
きちんと速読がテーマになっているし、少年パートの不気味さもフックになっている。途中で被害者の育が叔父のファンに開運グッズを売りつけていたことがわかるのだが実は速読塾の中には、こういったスピリチュアルな方向に誘導してくる団体も確かに存在するのだ。速く読むことを超常現象のように考えてる人もいるのだろうが、個人的にはそんな大それたものじゃないよと言いたい。
最後の一行はこの「本」だからこそ最大効果を発揮する。電子書籍もあるが、ぜひ書店で手に取ってもらいたい一冊だ。 (実業之日本社 660円)



















