「月のうらがわ」麻宮好著
「月のうらがわ」麻宮好著
13歳のおあやは母を亡くし、新兵衛長屋で大工の父と弟の3人で暮らしている。
ある日、隣に新しい店子が入った。侍らしい。長屋のおかみさんたちは、人を殺して国を追われたとか女敵討ちだとか噂している。のぞいてみると、小柄な男が文机で一心に筆を走らせている。机の周りは本の山だ。おあやが戸口の前に近づいたとき、下駄の鼻緒が切れて転んでしまった。
すると、侍が出てきて、引っ越しの挨拶代わりだと、女物の下駄をくれた。侍は坂崎清之介と名乗り部屋の片付けを手伝ってくれと頼む。文机の上には「つきのうらがわ」と書いた薄い冊子が載っていた。物語の続きが書けなくて困っているという。
「だったら、あたしに続きを考えさせてくれませんか」
亡き人への思いを抱えて生きる人びとの物語。
(祥伝社 1980円)