共謀罪に憲法改正…ナチス映画が暗示する日本の近未来図
厳戒態勢下の暗い社会で、爪に火をともすような毎日を送る中年夫婦のもとに一通の封書が届く。最愛のひとり息子が戦死したのだ。悲嘆と絶望。それは息子の命を奪った暴君への怒りへと転化していくが、暴君や政権への不満分子と周囲に見られただけで、命取り。黙って下を向いて、じっと耐え忍ぶだけなのか――。
安倍政権を野放しにしたらどうなるか。すぐちょっと先の日本社会を思わずにいられない暗黒社会。第2次世界大戦、ナチス独裁政権下のドイツを舞台にした映画「ヒトラーへの285枚の葉書」である。ある日、主人公の夫はハガキにこうしたためて、街角にそっと置いておくようになる。「現政権での幸せはない」「人殺しヒトラーを止めろ」「政権を倒せ、加担するな」……。これはすぐさま秘密警察の知るところとなり、捜査網が敷かれ、じわじわと狭まっていく。それでも夫婦はレジスタンスを止めない。そして、無残な結末へと突き進んでしまう。
この労働者階級の夫婦は実在した。1947年にドイツ人作家が書いた初版が、世界的ベストセラーになったのが2009年。その小説をもとに映画化、この夏日本公開されることになり、マスコミ試写会がはじまると、日本近未来図として、話題なのだ。