著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

上川隆也「遺留捜査」はテレ朝ドラマの“大関クラス”に成長

公開日: 更新日:

 13日、「遺留捜査」(テレビ朝日系)が終了した。主人公の糸村(上川隆也)が、東京から京都府警特別捜査対策室へと異動したのは昨年の第4シリーズでのことだ。

 今期、佐倉(戸田恵子)は室長代理に出世していたが、同僚の神崎(栗山千明)との珍コンビや、科学捜査係官・村木(甲本雅裕)との笑えるやりとりは変わらない。

 この「変わらない」ことがシリーズものでは大切で、その最たるものが糸村の観察眼と遺留品に対する並外れたこだわりだ。

 たとえば第8話では、古びた空き缶1個が突破口になった。30年前の事件に関係した男の死体発見現場にあったものだ。糸村は、男が病気の息子のために、空き缶にアルミホイルを巻いてロウ管式録音機を作っていたことをつきとめる。

 また最終回では、ガス管に使われる黄色い円筒だった。殺人を犯した姉(観月ありさ)の罪をかぶった弟(三浦涼介)が、姪(山口まゆ)の誕生日に手作りの万華鏡を贈ろうとしていたのだ。簡易録音機にも万華鏡にも作った人が抱える事情や込められた思いがあり、糸村がそれをすくい上げていく。このドラマが支持されるのは、遺留品を通じて人間の情や絆を丁寧に描いているからだ。

 同じく定番の「相棒」や「ドクターX」などがテレ朝ドラマシリーズの横綱なら、「遺留捜査」も堂々の大関クラスに成長したと言っていい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    夏の京都に異変! 訪日客でオーバーツーリズムのはずが…高級ホテルが低調なワケ

  3. 3

    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

  4. 4

    不倫報道の福原愛 緩さとモテぶりは現役時から評判だった

  5. 5

    ヒロド歩美アナ「報ステ」起用で波紋…テレ朝とABCテレビの間に吹き始めた“すきま風”

  1. 6

    中日立浪監督「ビリ回避なら続投説」は本当か…3年連続“安定の低迷”でも観客動員は絶好調

  2. 7

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

  3. 8

    夏休み到来! 我が子をテレビやゲーム、YouTube漬けにしない「割と簡単にできる方法」

  4. 9

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 10

    新庄監督は日本ハムCS進出、続投要請でも「続投拒否」か…就任時に公言していた“未来予想図”