復帰のめど立たず 休演を予測させた最後の「海老蔵歌舞伎」

公開日: 更新日:

 夜の部は古典の名作「義経千本桜」の新演出で、「星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)」と名付ける。13代目團十郎になるのにちなんでのタイトルで、13役を早替わり、劇中で宙乗りを2回披露。

「義経千本桜」は通しで上演すると、昼の部・夜の部とかかるが、それを夜の部だけで上演する。コンセプトは〈分かりやすいストーリー〉と〈飽きさせないテンポ〉。「義経千本桜」を何度も見ている人は「ここはこう変えたか」「こういうやり方もあるの」という興味で見ることができるし、初めて見る人には、「こういう話なんだ」とストーリーそのもので楽しませる。

 昼の部は4本立て。市川家ゆかりのものが3つで、堀越勸玄が出る「外郎売」が話題。「海老蔵の子、かわいい」という次元を超えていて、ひとりの「小さな役者」として舞台に立っている。16、17の両日は父・海老蔵が不在のなか、その父のセリフまで担い、「代役」をつとめきった。

「西郷と豚姫」は市川家とは関係がない芝居で、錦之助の西郷、獅童のお玉。錦之助では西郷を演じるには線が細いだろうと思っていたが、胆力を感じさせ、この人ならではの繊細さと陰影のある西郷となっている。獅童の女形は、登場したときこそ客席から笑いが出てしまったが、情のある女性をしっとりと演じ、いつしか笑いも消えた。2人にとって、飛躍となった。萬屋再興を目指してほしい。

 (作家・中川右介)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  2. 7

    白木彩奈は“あの頃のガッキー”にも通じる輝きを放つ

  3. 8

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  4. 9

    12.2保険証全面切り替えで「いったん10割負担」が激増! 血税溶かすマイナトラブル“無間地獄”の愚

  5. 10

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?