坂本冬美さんと「岸壁の母」…二葉百合子さんは命の恩人

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この歌で「心から戦争はいけない」と伝えたい

「岸壁の母」はその後、冬美さんにとって、さらに大きな存在となった。二葉から歌い継いでほしいと言われたのだ。

「8年前、二葉先生が引退なさった時に端野いせさんのお墓に近い和倉温泉(石川県)に先生とご主人と泊まったんです。その時に先生が『冬美ちゃんにこの歌を、歌い継いでほしいの』と。先生がずっと歌ってこられたのは歌謡浪曲のロングバージョンの『岸壁の母』ですが、歌い継ぐのはあなたしかいないとおっしゃるので『私には無理です』と即答しました。先生のように戦争の経験もなく、子供を産んだこともありません。そんな私がいせさんの気持ちを表現することはできない、歌い継ぐなんて恐れ多いと。それでも『この歌はうまく歌わなくていい。心で歌ってくれればいい』とおっしゃられて。それで『わかりました』とは言ったものの、二葉先生には引退されても声が続く限り、歌っていただきたいとお願いしました」

 6月の明治座の座長公演はショートバージョンのセリフ入りで歌った。

「今後は2年交代ぐらいのペースで『岸壁の母』を入れたコンサートをやっていきます。この曲は本当に魂を削る思いで歌っています。演じたり、テクニックで歌うのではなく、心から戦争はいけない、こんなに悲しい話があったということを伝えていかなければいけない。そのひとりに私が選ばれたんだと思って歌っています」

「お誕生日会の時に端野いせさんを演じ、先生の門を叩き、引退されて私が歌う。すべての点と点がつながって今がある。おこがましいけど、歌を託されたのは運命だと思います。先生との出会いがなければ、私は引退していました。私の命の恩人です」

(取材・文=峯田淳/日刊ゲンダイ

♪8月21日にニューシングル「俺でいいのか」をリリース。久々となる男歌は「あばれ太鼓」「男の情話」とは異なる、艶歌調だ。

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