「あなたの番です」も…“猟奇殺人犯”が多用されるワケ
確かに、ドラマでも映画でも“猟奇殺人犯”は見飽きた感がある。「またか」という気がしてしまう。1991年公開の米映画「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスが演じたレクター教授に衝撃を受けた人は多いだろうが、あれから30年近く。今はもう慣れっこじゃないか。
「類似品が腐るほど再生産されるのは、作り手も演者も楽だからでしょう」と、映画批評家の前田有一氏はこう続ける。
「サイコパスの猟奇殺人犯は、記号的にはファンタジー映画のモンスターと一緒で、何でもアリ。設定に多少無理があっても『だって普通じゃないもんね。仕方ないよね』で済まされてしまう。犯人を猟奇殺人犯にしておけば、どこにも角が立たない。視聴者から『職業差別だ』なんてクレームが入るリスクも少ないわけです。その点、動機がある殺人ドラマは、見る側を納得させる心理描写が難しい。作り手の力量が問われます」