「中央アジア紀行 ぐるり5か国60日」白石あづさ氏

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「中央アジア紀行 ぐるり5か国60日」白石あづさ氏

 東アジアに暮らす日本人にとって、「中央アジア」はどんなイメージだろうか。カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスからなり、文字通りアジアのど真ん中にあるが、馴染みが薄いという人が多いのではないか。

「“ぶらぶら気ままな一人旅”をテーマに、中央アジア5カ国を巡りました。中国の西、ロシアの南にあるこの地域は日本人にとってあまりにもマイナーで、“本当に本が売れるのか?”という不安もありました(笑)。しかし、書店の旅本コーナーにも中央アジアの棚をほとんど見かけない日本だからこそ、私が見て、体験した5カ国の魅力を楽しんでもらえると思います」

 著者は24年前に一度だけこの地を訪れており、今回も出発前までは“月の砂漠にラクダの隊商”というイメージだったという。しかし、最初に訪れたカザフスタンの首都アスタナで目を疑う光景に出合う。

「前回、大都市と聞いて訪れたアルマトイは、木造の建物が並ぶ素朴な街でした。だから今回も、せいぜい東京の八王子ぐらいの街だと思っていたんです。ところが降り立ってびっくり。新宿副都心よりもスタイリッシュで未来的な高層ビルが立ち並ぶ人工都市だったのです」

 わずか四半世紀での急速な発展。その背景には“白い熊=ロシア”の存在があるという。ロシアとの国境に近いアスタナに首都が移されたのが1997年のこと。ここに街をつくり人口を増やすことで、自分たちの領土だとアピールをする必要があったらしい。

「日本人には分からない、陸続き国家の難しさを感じました。一方で、そんな国の首都を設計したのは、日本人の故・黒川紀章氏なんです。日本とつながりの深い地域も多く、知らないままではもったいないと思います」

 絶景の宝庫でもある。例えば、「中央アジアの北朝鮮」の異名を持つトルクメニスタンの砂漠にある「地獄の門」。直径70メートルの大穴から有毒ガスが発生し、これを燃やすために火をつけたところ50年以上燃え続けているという恐ろしくも神秘的な場所だ。

「文化も風景も素晴らしいけれど、とくに引かれたのが“人”でした。あるガイドの青年は寝てばかりだったのに、ある日突然真人間に変身。雇い主に怒られたらしく、来世のために徳を積みたいイスラム教徒の彼にとって、それはこれまでの徳が大崩壊するほどの一大事でした。だから“自分のため”にやる気を出したというわけです。人懐っこい一面も相まって、何とも憎めない存在でした」

 デジタル化が進み、お年寄りがグーグル翻訳アプリを使いこなして話しかけてくる。電子マネーが普及し、現金を出したら紙幣を見たのは数年ぶりと驚かれる。日本より後進国と思い込んでいたため冷や汗をかく著者と一緒に、読者も驚かされるはずだ。一方で本書では、かつてシルクロードを支配したソグド人の末裔が暮らすタジキスタンの秘境なども訪れており、中央アジアの奥深さを見せつけられる。

「日本からの観光客が少なく、ガイドが日本語を忘れてしまうという声も聞きました。まだ多くの日本人に知られていないからこそ“行き時”です。本書で中央アジアに興味を持ち、旅の候補に加えてもらいたいですね」

(辰巳出版 2200円)

▽白石あづさ(しらいし・あづさ)日本大学芸術学部美術学科卒業。フリーライター&フォトグラファー。地方紙の記者を経て約3年間の世界一周旅行へ。世界100カ国以上を巡る。著書に「世界のへんな肉」「世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う」「お天道様は見てる 尾畠春夫のことば」などがある。

【連載】著者インタビュー

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