戦後80年目「終戦の日」の靖国神社をルポ 行き交うのは憲兵、右翼、親子、外国人…
今年は戦後80年の節目の年。毎年8月15日の「終戦の日」に日本武道館(東京・千代田区)で開かれる全国戦没者追悼式の横で、国事殉難者を祭る靖国神社は今年も多くの参拝者でごった返した。
日刊ゲンダイが靖国神社最寄りの九段下駅に着いたのは午前8時ごろ。大鳥居を目指して歩く道中、いろんな団体ののぼりが目に入った。〈中国は、ウイグル人に対するジェノサイドをやめろ!〉〈中朝人権問題を糾す会〉……。何げなく手に取ったチラシには〈南京は占領したが「南京事件」はなかった!〉と大書されていた。
靖国通りに並ぶ機動隊車両を横目に通り過ぎ、神社入り口にそびえる大鳥居をくぐって外苑へ。朝早くから老若男女が行き交い、夏休みだからか、子連れも目立った。半袖を着ているのに、和柄の長袖を“着ている”ように見えるコワモテ男性も多く、格闘技イベントの会場のような光景だった。
フラリと立ち寄った外苑脇の喫煙所には「憲兵」の腕章を巻いた日本兵が紫煙をくゆらせながら一休み。この日の都心は最高気温33度。肌を焦がすような日差しが照りつける中、右翼団体の一員とおぼしき男性がサングラスの奥を光らせ、憲兵をにらみながら「ふざけた日本兵がいるな」とつぶやくのだった。
拝殿前からの参拝者の列は時間が経つにつれて延びていき、午前10時前には参拝まで1時間半、昼前には2時間半待ちに膨れた。列を整備していた警備員は「お正月並みだと思う」と額に汗しながら語った。ほぼ毎年、終戦の日に参拝するという70代男性は「いつも年寄りと右翼ばっかりだけど、今年は特に若者が多いね」と感慨深げに言い、こう続けた。
「こんなに暑い中、1時間も2時間も並んだら死んでしまうから本殿への参拝は諦めたよ。ただ御朱印はもらってきた。やっぱり8月15日の日付を書いてもらうのが大切でね」
うだるような暑さの中でも、セミは鳴りやまない。ジージーと繰り返す鳴き声の合間に時折、聞こえてきたのは軍歌だ。外苑の片隅で軍帽をかぶりながら「日本男児」を熱唱する一団がいたかと思えば、別の場所ではオカリナを伴奏に、これまた軍帽をかぶった男性が「歩兵の本領」を独唱。いずれも旭日旗をはためかせていた。