根津「車屋」で厚みがあり脂の乗った鯖の一本寿司を堪能
台風の影響で暑さが少し落ち着いたある日の昼下がり、上野納涼祭で風鈴の音を聞き、桃色の蓮の花を愛でようと不忍通り散歩としゃれこんだ。
いや、ほんとは根津あたりで一杯やるのが目的なんだけどね。浴衣姿の外人さんたちを尻目にお目当ての店に向かう。開店5分前に到着。店前にはすでに数人の客がたむろしている。並ぶほどの人数ではないが、1人、2人と増えてくると小心者のアタシは穏やかではいられなくなる。あの人よりアタシの方が先だったよな……などと考えていると中から暖簾を掛けにスラリとした男性が現れた。今回お邪魔する「車屋」の3代目、柳井さんだ。
「お待たせしました」の声。そして席に案内されるときが人生で一番幸せなひとときだ。が、様子が違う。外で待っていたのは全員予約客。だから並ぶ必要がないわけ。アタシだけ予約なし。柳井さんが予約表とにらめっこしながら、ご親切にカウンター席を用意してくれた。盆休み前で今日は予約でいっぱいだ。「1時間ほどでよろしければ……」。もちろんです。
左側の長いカウンターの中ほどに案内され、まずは小ナマ(500円)で喉を潤す。そして数量限定の鯖の一本寿司(1200円=写真)をまずキープし、稚鮎の唐揚げ(850円)を。あっという間にビールを飲み干し、人心地ついて見回すと、古民家風の黒い柱と梁がシブイ雰囲気を醸し出し、自在鉤が下がるどっしりとした囲炉裏のテーブルが落ち着きを感じさせる。