「巣鴨プリズンから帰ってきた男たち」中川右介著

公開日: 更新日:

「巣鴨プリズンから帰ってきた男たち」中川右介著

 戦後の日本は、巣鴨プリズンに収監された戦犯たちの「ムショ仲間」によって支配されてきた。侵略戦争を計画し準備し遂行した人物や、そこに協力した財界の大物は、なぜ戦後日本を支配することになったのか。本書は、彼らが戦犯指名を受けて入獄してから復権を遂げ、戦後日本の設計の隅々まで関わることになった経緯を詳細に追った戦後日本史だ。登場するのは、最後に総理として蘇った岸信介、読売新聞や日本テレビなどのメディアを掌握した正力松太郎、黒幕として自民党を作ったと自ら豪語した児玉誉士夫、のちにボートレースで名を馳せた笹川良一ら。本書では、巣鴨プリズンは収監された者たちの交流が自由で、彼らには「全寮制の巣鴨大学」と呼ばれていたことや、そこで培われた人脈が戦後体制をつくる基礎になったことが明かされていく。

 反共を掲げる米国GHQが利用可能な人物を釈放した結果、自民党結成、原発推進、統一教会の躍進などの流れがつくられた。戦争責任を負うべき者の復権により戦争を総括せずに突き進んできた結果が、戦後80年を迎えた今あらわになっていることがよくわかる。 (清談社 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です