「巣鴨プリズンから帰ってきた男たち」中川右介著
「巣鴨プリズンから帰ってきた男たち」中川右介著
戦後の日本は、巣鴨プリズンに収監された戦犯たちの「ムショ仲間」によって支配されてきた。侵略戦争を計画し準備し遂行した人物や、そこに協力した財界の大物は、なぜ戦後日本を支配することになったのか。本書は、彼らが戦犯指名を受けて入獄してから復権を遂げ、戦後日本の設計の隅々まで関わることになった経緯を詳細に追った戦後日本史だ。登場するのは、最後に総理として蘇った岸信介、読売新聞や日本テレビなどのメディアを掌握した正力松太郎、黒幕として自民党を作ったと自ら豪語した児玉誉士夫、のちにボートレースで名を馳せた笹川良一ら。本書では、巣鴨プリズンは収監された者たちの交流が自由で、彼らには「全寮制の巣鴨大学」と呼ばれていたことや、そこで培われた人脈が戦後体制をつくる基礎になったことが明かされていく。
反共を掲げる米国GHQが利用可能な人物を釈放した結果、自民党結成、原発推進、統一教会の躍進などの流れがつくられた。戦争責任を負うべき者の復権により戦争を総括せずに突き進んできた結果が、戦後80年を迎えた今あらわになっていることがよくわかる。 (清談社 1980円)