歌舞伎とは違う「太神楽は努力が報われる仕事なんです」
国が太神楽師を養成する制度があることは一般には知られていない。正式名称は「日本芸術文化振興会 国立劇場太神楽研修」。1995年秋から志望者を募集した。仙三郎は講師のひとりとして加わった。
「1期生は20人の応募者の中から10人選抜して、さらに3カ月後に適性検査で5人に絞りました。研修生には国から月に10万円の奨学金が支給されますが、3年間の研修修了後、最低2年は太神楽師をやらないと半額の180万円を返還しなきゃならない。税金を使わせてもらっているわけだから当然ですが」
太神楽師養成に援助するとは、国も粋な計らいをするものだ。
「研修が始まって困ったのは、一門によって流儀が違うことです。撥の投げ方ひとつでも教え方が違うので、研修生が混乱しちゃう。そこで手書きの教科書を作って統一させました。
この研修のいいところは、2年目に副科として長唄、三味線、日本舞踊の授業があることです。それも講師陣は皆さん一流の大家ばかり。初心者に教えるんですから我々太神楽師以上に大変だったでしょう。3年目には獅子舞と江戸太神楽祭り囃子の授業があって、すべてマスターすると修了ということになります。卒業生5人のうち4人は現役の太神楽師です。昨今、若手ナンバーワンといわれる翁家和助君もそのひとりです」